ことばを
ことば、がすきです。
文章、がすきです。
本、がすきです。
ずっとずっとすきでした。
気付いたときにはそばにいたんです。
家の近所に図書館があって、当たり前のように毎週通って、日が暮れるまでこどもコーナーで読んで、閉館時間でどっさり借りて、絵本って大きさがまちまちだし大きなものはバックのなかには入らないから両手でだっこしながら歩いて帰って、母に「ごはん食べなさい」「お風呂入りなさい」って怒られるまで読み続けて、眠くなるまで布団に潜って読みふけってました。
外で遊ぶのもだいすきだったけど、本を読むことがもっともっとだいすきな子どもでした。
年をとって、本を読むってこと以外にもたくさん面白いことを知ったし、飽き性だからすきなものもころころ変わったけど、これだけ長くすきでいるものはないです。
仕事、としての選択肢に「ことば」や「本」を入れたことはいままでなかったのだけど、ずっとたずさわっていきたいものは?わたしはこれをしています!って胸をはって言いたいものは?わたしが思う"楽しい"に最も忠実でいられるものは?ってここ何年か自分にたくさん問いかけ続けた結果、いま、やっと少しずつ見えてきた気がします。
やっぱりわたしはいままでずっとすきだったものにもっとふれていたいです。
いますきって思えてるいろんなもの、ぜんぶまとめてずっとそばにいてほしい。
わたしが楽しい!って思ってるものを他の人も同じように楽しい!って思ってるって知りたいし、楽しい!って思ってもらえるようになったら嬉しい。
そんなふうに生きていきたいです。
楽しいに忠実に生きるために、ほしいものをほしいとおっきな声で言えるように。
ちゃんと手に入れられるように。
「ことば」にして残していけたらいいな、と思ってます。
見ていてくれたらうれしいです。
よろしくお願いします。
『魔法使いはだれだ』
- 作者: ダイアナ・ウィン・ジョーンズ,佐竹美保,野口絵美
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2001/08/29
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 28回
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わたしが最も敬愛している作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズ。
ジブリがハウスを映画化したことで日本でも知られるようになったけど、彼女の作品のなかでは「魔法使いハウル」よりも「クレストマンシーシリーズ」がいちばん多く書かれています。
この作品はわたしが初めてダイアナ・ウィン・ジョーンズに出会った作品です。
「魔法」というものが確か存在はしているが「違法」になっている世界の寄宿学校が舞台。
もうね、「寄宿学校」というだけでわくわくしませんか?
ほとんどの日本人は寄宿学校というものにはあまり馴染みがないと思うのです。
物語の中でしかお目にかかれない「寄宿学校」。
何かが起きちゃいそうな妄想が捗りまくります!
話はナン・ピルグリムとチャールズ・モーガンの目線で語られていきます。
ナンは生徒のことを「本物」と「まがいもの」「それ他」そしてどこにも属せない子たち、と分けて表します。
ふたりともクラスのなかでははみだしもの。
つまりどこにも属せない子。
最悪だけどそれが普通、という毎日を送っています。
そんななかで「このクラスに魔法使がいる」と書かれたメモが見つかります。
絶対のタブーである魔法のことにふれたものがいて、さらに魔法としか思えないようなことが次々と起きてクラス中が揺れに揺れる…というはなし。
メモが見つかるところから始まる話ですが、見つかったメモのことはメインであるはずの生徒たちは知らないんですね。
メモで右往左往するのは先生方。
生徒たちからすると先生って絶対的な存在じゃないですか。
だけど、先生たちだって聖人君子じゃない。
恋もするし利己的だし自分を守るためならどうとでも振るまう。
学園物でこんなに先生が人間臭く描かれるかあ、という面白さ。
というか、この作品は「魔法使い」ものという完全に夢あふれるわくわくジャンルなのに登場人物たちが人間臭すぎる。
そこまで?と思ってしまうくらいにみんな自分のことしか考えていない。
そのためにもう収拾がつかなくなって、逃げ出したその先、はなしの三分の二を過ぎたあたりでやっとシリーズの中心人物クレストマンシーが登場する。
ここからのジェットコースターのような話の目まぐるしさが最高に気持ちよいのだ。
これがダイアナ・ウィン・ジョーンズの醍醐味ともいえるのだが、後半まで焦らされているかのように積み重ねてきた、ありとあらゆる描写をすべてぐるんっと混ぜ込んで勢いよく終盤に向かっていく。
三分の二はこの子たちの目線で読んでいたのにも関わらず、あまりにも自分勝手な言い分をクレストマンシーがやり込めるシーンはついすっきりしてしまう。
メモを書いたのはいったい誰なのか。
魔法使いは誰なのか。
それから、読んでいくうちに感じるちぐはぐさ。
それはいったいなぜなのか。
謎解き要素もありつつ、魔法が出てくる非現実的なわくわくさもありつつ、10代の子供たちのうずうずしてしまう懐かしさも楽しめるおはなし。
「ファンタジーの女王」と言われるダイアナ・ウィン・ジョーンズの世界にどうぞ浸ってみてください。
『女海賊メアリ・リード』
実在した女海賊メアリ・リードの伝説をもとにつくられた長い長い航海の、人生のおはなし。
海賊が主人公の話、というと何かしらの財宝を求める冒険物語を想像するかもしれない。
この話ももちろん追い求めるにふさわしい魅力的な財宝が登場する。
しかし、読んでいくなかでわくわくしてしまうのは財宝そのものではなく、メアリ・リードの生き様だ。
主人公のメアリ・リードは母1人娘1人の貧乏暮らし。
小さい頃から母親に言われて男装して過ごしている。
この話はメアリが大人になり母になっていく過程を描いた作品なのだが、取り巻く登場人物たちがとにかく魅力的だ。
そしてそのみんながみんな彼女に夢中なのだ。
だけど決してハーレムもの、という印象は受けない。
それくらいにメアリ・リードがとんでもなく魅力的なのだ。
ただちやほやされるだけの女の子では決してなく、もしかすると誰よりも男らしいのかもしれない。
そして誰よりも自由で、無鉄砲で、頑固で、したたかで、綺麗で、愛情深くて、目を離さずにはいられない。
出会った誰もが好きにならずにはいられない。
でもメアリ・リードは同じ場所には留まれない。
わくわくする何かを求めないではいられない。
メアリ・リードは女性としてただ守られるだけの人生は選べなかった。
つらい運命をただ受け入れて死んでしまうような悲劇のヒロインになるわけにはいかなかった。
復讐を成し遂げるために生きて、強くならなければならなかった。
メアリはずっと自由だった。
しかしそれは孤独でもあるということ。
自由と孤独はイコールではないけれど、誰かを愛してしまうことは、執着する何かがあるということは、弱みが出来てしまうことでもある。
彼女がしゃくりあげ、泣きながら、愛を分かち合う人がいることが最も価値がある宝物だと認めたときに、どうか彼女がやっと見つけた幸せが続きますように、と思わずにはいられない。
全4巻。
長いと思うかもしれない。
しかし次から次に出てくるメアリリードを取り囲む登場人物を、決して媚びることなく、どんどん魅了してしまうメアリ・リードにきっと夢中になるだろう。
そしてメアリ・リードは実在する人物だ。
アン・ボニーというこちらも実在する女海賊とふたりで海を渡り歩いたという確かな記録が残っている。
読み終わったあとは今はなき海賊時代に想いを馳せること間違いなしだ。