よるにゆるりと

黒とか白とかグレーとか

『ペギー・スー 魔法の瞳をもつ少女』

 

 

久しぶりにこの本を手に取ったとき、この本は果たして子供の時に読んだときにここまで楽しめていただろうか、と思わざるを得なかった。
あのときにここまでぞくぞくして、でもページを繰ることすらもどかしいほど続きが気になるくらい楽しめていたかしら…。

 

どこの児童書のコーナーにも置いてあるくらい有名なシリーズ。
これは大人が読んでも絶対にドキドキぞわぞわしちゃえる良質なファンタジーだと思う。

 

〈見えざる者〉を見てしまう能力を持ってしまったかわいそうなペギースーという女の子のおはなし。
どこにいてもこの能力のせいでまともに生活することができない、誰にもわかってもらえない苦しみを1人で抱えて生きている。

シリーズものだが、最初は村に出てくる不思議な太陽をきっかけに始まる。

一度知ってしまった能力をもう一度、と思ってしまうのはいけないことなのだろうか。
ほんの僅かな時間だけ、と、危険なことなんだ、と、わかっていてもそれでもまたあの時間が訪れるならと動いてしまう村人たちを見て一概に愚かなことだと思えなかった
末路がわかっていても、わたしならどっちにいってしまうかな、とつい考えてしまった。

しかし待っている危険は人間たちに害を為す、なんてところでは到底終わるはずもなく…。
今の自分がこうして普通に食べ生きて生きているこの環境がひっくり返ってしまったとき、無力さに気付いたときの絶望感。
どうしようもなかったじゃん、だからもう許して、と現実逃避してしまいたくなるくらい閉鎖感。
じわりじわりと世界がおいつめられていく描写がとても緻密で、冷や汗がでてしまう。

大人たちが死に物狂いで子供たちを襲うシーンが読んでいて泣きそうになるくらい切実だ。

 

しかし彼らが人間と同じように振舞い支配しようとするくだりは恐怖もありつつどこか物悲しい。
同じ服を着て同じ仕草をして、しかしそれはやっぱりまったく同じようには出来なくて。
それは当たり前なんだけど、でも、それをすることで同等、あるいは上に立つことだと信じている。
その姿はどこか滑稽でやるせない。

 

この作品の面白いところはとにかく圧倒的なめまぐるしさ。
次から次に危機が襲ってきて、村として一応の解決は見せるものの、そもそも根本の〈見えざる者〉たちについてはこれっぽっちもわかっていない。
ただただ過ぎ去っただけ。
そこが恐ろしいし、続きを読まなくちゃと思わせる。うまい。

 

ペギースーは本当に普通の女の子でいたいだけなのに、人とほんの少し違う力があるだけで勇敢にならなくちゃいけないし、危険な目に合わなくちゃいけない。
分かり合える仲間がいるわけでないのでどんなところにでもひとりで飛び込むしかない。
それが読んでいてなんだか悲しくなってしまう。

ぎりぎりと苦しい話ではあるけど、最後のシーンはこれからのペギー・スーを少し心強くさせるものであるから読んでいてほっとする。

遭わされる危険がどれも本当にスリリングで、安心して躊躇なく物語に没頭できるシリーズ。
はらはらどきどきをお好みを方なら自信をもっておすすめします。

 

ペギー・スー―魔法の瞳をもつ少女

ペギー・スー―魔法の瞳をもつ少女